xAPI(Tin Can API) SCORM情報
eラーニングは、ICT(情報通信技術)を使って行う学習システムですが、その仕様に関しては、国際的な標準規格が定められています。
この規格がSCORMで、米国のADLという機関が策定し、世界各国の政府、関連機関、企業とも協力して普及促進活動を進めています。
このADLには、直接SCORM Adopter(SCORM採用企業)(※)として認定登録を受ける制度があり、各国の多くの企業が登録されていますが、弊社もその一つです。
このコーナーでは、同登録申請に当っての弊社の実体験をベースに、SCORMに関する実践的な知識をご紹介して参ります。
併せて、次世代SCORMと言われる xAPI(Tin Can API)についても、実践的な情報をご紹介して参ります。
※SCORM Adopterは、米国ADLによる認定登録の制度で、国内の制度とは別のものです
xAPI(Tin Can API)の基礎知識
次世代SCORMとして発表された規格で、正式名称はExperience API(略称:xAPI、旧称:Tin Can API)。
広範なデバイスをカバーするとともに、ビッグデータ活用に向けたLRS(Learning Record Store)の仕様を規定している。
※BISCUE eラーニング、BISCUE App は、米国ADLのxAPI Adopters List、及び国際的Tin Can APIサイトのAdopters of the Tin Can APIに登録・掲載されています。
SCORMの基礎知識
まず、SCORMの基礎を、ADLの制度も含めてご説明して参ります。
米国のADLとは?
ADL(Advanced Distributed Learning)は、1997年に米国国防総省の内部に設置された組織で、教育・訓練の標準化、近代化を目的にしています。
企業や団体として法人格を有している組織ではありませんが、国防総省の内部組織として、eラーニング規格の標準化を進めています。
SCORMとは?
SCORMは、Sharable Content Object Reference Modelの略で、ADLが eラーニング規格の標準として策定、提唱し、世界的にその採用を推進しているものです。
eラーニングは、LMS(学習管理システム)の上で教材コンテンツを利用するという形態が一般的ですが、この両者を連結する部分の共通仕様などを定めたのが、SCORMです。他にも色々規定していますが、詳しくは、下記の仕様概観をご覧下さい。
日本でも、経済産業省、特定非営利活動法人日本 eラーニングコンソシアム(eLC)を中心に、普及活動が行われています。
SCORM Adopterとは何ですか?
規格は制度だけでは普及しませんので、ADLでは、SCORM規格を採用した世界中の企業を対象に、SCORM Adopterとして認定登録する制度を設けているわけです。
このSCORM Adopterに認定登録されるためには、以下の手続きを経る必要があります。
- ADLのTest Suite(製品が、SCORM仕様に合致しているかどうかを確かめる試験プログラム)を使って、テストを行う
- Test Suiteによるテストで、合格の認定を受ける
- 上記合格認定を添えてADLに申請し、認められれば、SCORM Adopterとして認定登録される
なお、本制度は、ADLの提唱するSCORMに対応した製品(SCORM Conformant)を普及させることが目的で、ADLが製品について保証をしているわけではありません。
SCORM 2004 vs SCORM 1.2
SCORMはその発表以来、Version 1.0、1.1、1.2と改訂を重ね、その後2004年にSCORM2004が発表されました。
この規格は、SCORMのメジャー・バージョンアップによる最終版として2004年1月に発表されたもので、その後マイナーな調整が行なわれています。
従来市場では一つ前のSCORM1.2が流通してきました。しかし、SCORM2004が同規格をほぼ包含し、更新した上で、ADLの完成規格として発表されたことから、現在グローバルの市場ではSCORM2004が業界標準となってきております。
SCORM本家、ADLのSCORM Adopter認定登録
弊社は、2002年に日本企業としては初めて、ADLよりSCORM Adopterの認定登録を受けて以来、最新規格SCORM2004に至るまで、色々な製品部門で、認定登録を受けて参りました。
- 2002/12、コンテンツ部門(SCORM1.2)で、「BISCUE e-Learning」
- 2003/11、LMS部門(SCORM1.2)で、「BISCUE LMS」
- 2004/8、LMS部門(SCORM2004)で、「BISCUE LMS II」
- 2007/4、コンテンツ部門(SCORM2004)で、「BISCUE e-Learning II」
Source:Advanced Distributed Learning Initiative (ロゴはADLの登録商標です)
中でも、2004/8のLMS部門(SCORM2004)「BISCUE LMS II」は、SCORM2004 Adopter 世界第1号として、大変名誉な認定登録を受け、eラーニング先進国の韓国ほか海外関係者などからもご賞賛を頂きました。
ADLのサイト、Search SCORM Adoptersで、登録企業を検索することができますので、ご覧下さい。
(SCORM Version: 欄でSCORM Version 2004を選ぶと、SCORM2004登録企業が、登録順にご覧頂けます)
なお、このロゴマークは、SCORM Adopterに使用が許諾されているものです。
標準化のメリットとは・・・
このように、標準規格のSCORMに積極的に取り組んでいるわけですが、こうした規格も、ユーザーの皆様が十分にそのメリットを引き出してこそ意味があるものと、弊社では考えております。
こで、ここから標準化にはどのようなメリットがあるのかについて、ご紹介したいと思います。
標準化のメリットとは?
製品の標準化は色々な分野で行われていますので、改めて申し上げることもありませんが、一般的なメリットを幾つかを挙げてみましょう。
- 使い勝手が同じになることで、使いやすいものになる
- 製品仕様が安定することから、トラブル件数が減る
- 同一仕様のスケールメリットで、コスト、価格が下がる
SCORMによる標準化のメリットは?
それでは、SCORMによる標準化にあてはめてみましょう。
ソフトウェアをはじめ新製品を使うときには、慣れるまでの期間が必要ですが、使い勝手が共通化していれば、こうした時間も少なくなりますね。
現在 eラーニングは、LMSとコンテンツに分かれて流通していますが、例えばこの連結部分の標準化が進めば、どのコンテンツを、どのLMS上でも使えることになります。
また、スケールメリットは、eラーニングにもあてはまりますので、より良い製品が、より安価に提供されることになります。
SCORM技術仕様の概観
ここから、最新規格のSCORM2004について、少し中身を見てみましょう。
SCORM2004の規格は、ADLが発行した次の4冊の仕様書(英語)にまとめられており、ADLのサイトから無償でダウンロードすることができます。
Overview
このパートはSCORM2004に関する概観で、以下のような内容が記述されています。
- SCORMと他規格(IMS、IEEE、AICC)との関わり
- SCORMの歴史
- SCORMの目的
- SCORMを支える組織
Content Aggregation Model (CAM)
コンテンツアグリゲーション(集合)モデル。ちょっとわかりにくいですが、教育では必ずしも一つのコンテンツだけを使うわけではありませんね。そこで、コンテンツをどのように組み合わせるかについての規格が決められていいるわけです。
CAMには以下のような規格が記述されています。
- コンテンツの構造を記述するファイル(imsmanifest.xml)
- コンテンツの概要を記述するメタデータ(Meta-data)ファイル
Run-Time Environment (RTE)
いわゆる実行環境のことで、eラーニングでは、LMS(Learning Management System:学習管理システム)と、かなりダブった概念です。
RTEでは、様々なベンダーが提供するLMS、コンテンツを組み合わせて利用できるよう、以下の規格が定められています。
- LMSと、コンテンツの間のデータやり取りの方法(API)
- 学習を管理するために使うデータの種類(データモデル)
即ち、SCORMに完全準拠したLMSとコンテンツを作れば、どのLMS上でも、どのコンテンツも動くことになるわけです。
Sequencing and Navigation(SN)
順序付けとナビゲーション。実際に教育をする立場になると、どういう順番で教えていけばよいか、といったことが問題になりますね。
例えば、次のようなコースを企画したとしましょう。
- 事前にテストをする(プレテスト)
- その結果に従って、必要な部分を教える
- 教えた効果を見るために、テストをする(ポストテスト)
現在、教育手法ではインストラクショナル・デザインが注目されていますが、こうした手法をコンピュータ上で実現するためには、コンテンツの順序付けやナビゲーションの進め方を、教育する側が決める必要があるわけです。
そこで、最新規格SCORM2004では、こうした現場でのニーズも考慮した上で、規格に盛り込んだということです。
なお、上記の規格の内、Overview、CAM、RTEの3つは、SCORMの一つ前の規格であるVersion 1.2にもありましたが、SCORM2004では内容が大幅に変更されています。
より良いサービスを目指して
繰り返しになりますが、標準規格はユーザーの皆様が十分にそのメリットを引き出してこそ意味があるものと、弊社では考えております。そのためには、
- ユーザーの皆様が使い勝手のよい規格に育てる
- 運用上のトラブルを最小限に抑える
- SCORMをうまく活用することで、ユーザーの皆様が、教育のROI(Return on Investment)を十分上げられるようにする
といったことが、必要です。弊社では、こうした標準規格SCORMが、市場(海外も含めて)に定着するように、引き続き尽力して参りたいと考えております。